映画・舞台・本の感想記録。さて、どの夢を見ようかな。
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「アンナとロッテ」
![]() 2002年/オランダ、ルクセンブルグ/監督:ベン・ソムボハールト/出演:テクラ・ルーテン 、ナディヤ・ウール 、エレン・フォーヘル 、フドゥルン・オクラス 、ユリア・コープマンス 親を亡くし、幼い日に引き裂かれた双子が、それぞれ辿る運命。 結核で身体の弱かったロッテはオランダの裕福な親戚に引き取られ、一方アンナはドイツの貧しい農家に働き手として引き取られました。 虐待を受けるアンナと大切に育てられるロッテ。ある日ロッテは、送ったはずのアンナへの大量の手紙が書棚の奥から出てきたのを発見して、アンナに会いに行くことを決心します。 そしてそのとき、彼女たちは完全に道を分かつことになるのですが・・・ 運命に翻弄された双子、それぞれどちらが幸せだったのかとか、そういうものは全く問題ではありません。 彼らを引き裂いたのは、天の授けた運命と、人が作り出した悲劇。 (ネタバレ反転)↓ 二人を引き裂いた決定的な事柄は、アンナがロッテの婚約者がユダヤ人であることを指摘したことでした。 ドイツに住むドイツ人のアンナにとって、ユダヤ人差別の視線があって当然のこと、けれどオランダで非道なドイツ人を敵視する環境の中で暮らすロッテにとっては、自身がドイツ人であることですら嫌悪感を抱いてるわけです。一番大切な相手を、自分の半身が侮辱したこと。それは、ロッテにどれだけの傷を与えたことか。 老人になって再会したロッテを追いかけるアンナの叫んだ言葉が胸に刺さります。 「私たちが分かり合えないで、世界はどう分かり合うの?!」 お互いを愛しているのに傷つき、傷つけ合う二人。 二人が手を取ったとき、暖かな気持ちになりました。けど、未来への明るい光が見えるとまでは、到底言えません。それほどに人の業は深く、憎しみの連鎖は固く結ばれたままの世界であるように思えます。 世界は、どうなるのかな。 でも、お互いの手を取りたいと願っていれば、希望だけは失わずにすむのではないかと思います。 PR
「キャラバン」
![]() 1999年/フランス・ネパール・イギリス・スイス/監督:エリック・ヴァリ/出演:ツェリン・ロンドゥップ、カルマ・ワンギャル、グルゴン・キャップ “ある伝説的な長老が子供の頃の物語”ということで語られた物語。 ヒマラヤのキャラバンを率いる長老ティンレ。事故で長男を失い、幼い孫のパサンに次期長老の期待を寄せる。年老いたティンレと幼いパサンに、周囲は不安一色。一方、長男の親友だったカルマはティンレのやり方に異を唱え、村の若者を連れてキャラバンに出発してしまう。 占いをし、神の、山の声を聞こうとするティンレと、現実的な考えをする若者カルマ。時代の移り変わりでしょうね。 ティンレのやり方は強引で、頑固なおじいちゃんそのもの。 僧院へ入れた息子を強引にキャラバンに連れて行こうとしたり、意地のために、老人と子供ばかりのキャラバンに危険なルートを選んだり。 それでもティンレのカリスマ性は村人と山を従わせるのです。 最初はティンレに嫌悪感を抱いていた私も、見ているうちに、彼を認めざるを得なくなりました。 彼は、間違いなく長老の器だったのでしょう。 ティンレに反発する若者カルマがすっごいカッコ良かったです。ときめきました。カルマもまた、ティンレとは違う魅力を持つ器なのでしょうね。 そして、何より山々の風景の美しさ。空や湖の青が、空気が澄んでることを思わせる感じです。ヤクと、民族衣装と山と空。すごく素敵でした。 音楽がまたすごく素敵でしたー! ラマ僧のお経に、女声コーラスが重なる主題歌。聞いたときにもう、ゾワリとしました・・!サントラCDあったらしいんですが、もう廃盤らしいです。
「ドリーマーズ」
![]() 2003/イギリス・フランス・イタリア/監督:ベルナルド・ベルトルッチ/出演:マイケル・ピット 、エヴァ・グリーン 、ルイ・ガレル 、ロバン・ルヌーチ 、アンナ・チャンセラー 久しぶりに感想を書く映画が18禁っていうのもどうかと思いますけど。フランス映画らしい映画で、私は好きです。やー、好みは別れるかなぁ・・・。あの双子から、ジャン・コクトーの「恐るべき子供たち」を思い出していたのですが、監督さんの意図として、それはあったようですね。 映画オタクの青年マシューが出会う、一卵性双生児のイザベル(姉)とテオ(弟)。マシューの目を通して、双子の異常な潔癖さと子供のような純粋さを垣間見ます。 偶然マシューがその瞬間を目撃する立場になってしまっただけで、マシューの存在が彼らをかき回すほど大きかったわけではない。 マシューはきっかけの一つ。 どちらかというと、イザベルの望んだ世界だったのでしょうか。 テオは、マシューに少し影響されてるように見えましたね。 二人の映画クイズが楽しかったです。実際に答えられる問題はなかったのですが、あのマニアックさ・・・ステキすぎますv 映画に心酔して、本に囲まれて、外の世界を知らない双子たち。 なんとなく、自分と重ね合わせてしまうのかもしれませんね。 私の10代も、社会を知らず、本と妄想だけで生きてた。だから、テオの矛盾した純粋主義みたいなことも考えていたような気がする・・・ そして、その気持ちこそが正しいのだと思ってました。 大人になっても、今の自分の気持ちを忘れずにいたいと願っていたと思います。大人になるということは、何かを捨てるということだけではないのに。 だから、こんなに痛々しく、切なく感じてしまうのでしょうか。 そしてあの印象的なラスト! 一応言っておきますが、あくまで18禁映画ですので。 しかも普通ではない環境ですので。 や、びっくりしたら困るので、一応ね(笑)。 私は、あれは芸術の中で必要だと思うんですが、感じ方は人によって違うので。一般向けの映画ではありません。
「霧の中の風景」
1988/ギリシャ・フランス/監督:テオ・アンゲロプロス/出演:タニア・パライオログロウ、ミハリス・ゼーゲ、ストラトス・ジョルジョグロウ 幼い姉弟が、父親を探してアテネからドイツへ旅をするロードムービー。 この二人がとても可愛いんですが・・・(特に弟) 幼い二人が出会う数々の痛々しい現実に、目を背けたくなる箇所がたくさんありました。特にあの、お姉さんがトラックの荷台でさ~・・あのシーンは、映像では出ませんでしたが、「それって、そういうことよね?!」と見る側には分かるようになってる。あのシーンを見たときには、かなり落ち込みましたよ・・・。 母親は、ドイツに父親がいるのだ、と子供達に言っていたのですが、多分ドイツに辿り着いても父親はいません。 先の見えない旅。 子供達が霧の中を進んでいく姿が、すごく印象的でした。 また、映像美がすごい!! 全てのシーンを切り取りたいくらいに、綺麗でした。ああいうカットの作り方はもう、たまらない!ゾクゾクしましたよ~
「家族の肖像」
1974年/イタリア、フランス/監督:ルキノ・ヴィスコンティ/出演:バート・ランカスター、ヘルムート・バーガー、ドミニク・サンダ、クラウディア・カルディナーレ、シルヴァーナ・マンガーノ やー、すごいですね、巨匠!!古い作品なのに、ぐいぐい惹きこまれる作品でした。 「ヴェニスに死す」よりは随分分かり易い作品ですね。 家族の肖像画を収集するのが好きな老教授。一人で静かに暮らす彼の家に、個性的な家族が現れて、突然「上の部屋を貸して欲しい」と頼まれます。静かな暮らしを壊されたくない教授は、即答で断るのですが、押しの強い彼らに振り回され、いつの間にやら家族のような奇妙な関係になっていく。 本当に破天荒な人たちでしたが・・・静かな生活を守りたいと思っていたはずの教授の心境の変化を見ると、色々思うところ、あります。 生きていることと、死ぬこと。そして、家族の定義。 印象的な言葉の多い作品でした。 ところで、「ヴェニスに死す」同様、美少(青?)年をえらい魅力的で印象的に描くなぁ・・・と思っていたら、ヴィスコンティ監督はどうやら、バイセクシャルらしいですね。それでこんなに男の子が魅力的なんだ。こういう情報は映画の妨げになるかもしれませんが、「家族の肖像」で強烈な魅力を放っていたヘルムート・バーガー。彼は、ヴィスコンティ監督に俳優として育てられた、愛人だったらしいです。ヴィスコンティ監督の死後、ほとんど映画に出なくなってしまったらしいですが・・・こういう話を聴くと、何かこう、芸術性の高い二人の常人には入り込めないような関係みたいなのを感じて、この映画に対する思いも、何か緊張を増す気がします。「家族の肖像」での老教授と彼との会話も、そんな感じなの!あ、でも(雰囲気はありましたが)同性愛映画というわけではないですよ。 ヘルムート・バーガーは「ドリアン・グレイ」も演ってるんですね!おわ~、イメージぴったりですっ! |
カテゴリー
最新記事
新潮文庫の100冊 2010
読書記録
プロフィール
HN:
水玉
性別:
女性
ブログ内検索
|