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映画・舞台・本の感想記録。さて、どの夢を見ようかな。
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「ディア・ドクター」
2009/日本映画/監督・脚本・原作:西川美和/出演:笑福亭鶴瓶、瑛太、余貴美子、井川遥、香川照之、八千草薫

公式ページ:ttp://deardoctor.jp/

「訴えられるのは私の方かもしれません。」

映画館にて観賞。
人が良さそうで人の和にスッと入る人物で、それでいてなんだか胡散臭い。この映画の主人公は、鶴瓶師匠にしかできなかっただろう、と思いました。
都会から隔離された農村で、一人の医師(笑福亭鶴瓶)が失踪するところから、物語は始まる。村人たちのほとんどが老人。この村の中で、彼は村人から神さまのように大切に扱われていた。
彼の行方を調べる刑事二人。
しかし、彼のことを調べれば調べるほど、彼についての不審な事実が判明してくるのでした。

いくつかの嘘が引き起こす物語。ネタバレ部分は反転↓
でも彼らは、本当にしたかったのかもしれない。
どこかで分かっていて、それでも彼の存在は必要だった。
そういえば後になってから思い出したの。
あのときも あのときも あのときも

ああ、そうか。見ない振りをしていたんだ。

そうだよね。特に医療に関わる人であれば、いくら研修医であっても分かるもん。
伊野医師が村から逃げていく後姿を見つめる子供の目が印象的でした。
もしかしたら、本当は色々言われていたのかもね。各家庭では。怪しい、と。それでも、外では絶対それを言わなかった。それを言って何かが壊れることを恐れていたのかもしれません。
土砂崩れの事件のときは、本当に怖かったでしょう。
余さんも瑛太くんも。あ、香川さんもね。この3人は確実に知ってましたよねぇ。
余さんの崩れ落ちるように座った姿。
もし、あのとき患者が亡くなっていたら。あの事件で、彼女は自身の罪を思い知ったことでしょう。
でも・・・

あの村に、伊野はどうしても必要だったんです。

井川遥がラスト近くで言ってた、「彼ならどう母を死なせていたか。」ということ。
先進医療でベッドに縛り付ける都会の医療。
変わらぬ日々を過ごし、できるだけ痛みを和らげてあげる。

わざと誤診をするという罪。
でも、彼は楽な道を選んだのではない。
頻繁に患者の家に通い、様子を聞き、点滴をする。それは設備の整った病院で目の届くところに置いておくよりも大変なことです。
毎夜、物凄い量の勉強をしている(書物からしても、多分瑛太くんには伊野がプロではないことが分かったかもしれませんね)。

勿論、それらの嘘は決して許されることではないでしょう。
許したら、それはそれで何かが壊れる。
だから、村人たちは伊野がニセ医者だと判明してからは全く彼をフォローしなかった。瑛太くんもね。
でも、気づきたくなかった。
本当は判明して欲しくなかった。
騙されていたかった。


んですよね。

瑛太くんがこの村に帰ってきたいと言ったのも本心、伊野がニセモノであると主張したにも関わらず、そうと認めなかった。認めてあげなかった。
伊野は、瑛太くんにもバレてるって分かってて、その上であんなことを言う瑛太くんに腹を立てたのでしょうか。
からかってるのか、それとも良心の呵責を感じさせたいのか。と。
でも、瑛太くんの言い方が、「そういうことにしておきましょうよ。ここにいてくださいよ。」という意味だと分かって、しょうがないやつだ、と微笑んだのかもしれない。


白とか黒とか、そういうはっきりした区切りはつけられない映画でした。
でも、最後に伊野がああいう形で八千草さんのもとに来たのは、彼は彼にできる責任の取り方で、最後まで彼女を看てあげたかったのでしょう。そう思いたいです。
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