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映画・舞台・本の感想記録。さて、どの夢を見ようかな。
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「ぜんぶ、フィデルのせい」

ぜんぶ、フィデルのせい [DVD]

2006/フランス/監督・脚本:ジュリー・ガブラス/原作:ドミティッラ・カラマイ/出演:ニナ・ケルベル、ジュリー・ドパルデュー、ステファノ・アコルシ、バンジャマン・フイエ

父親の姉の夫が死んだことがきっかけで、共産主義者になってしまった家族。
突然貧しくなって家を引っ越して、大勢の人が出入りするようになり、カトリック学校で宗教の授業を受けることを禁止され、パパとママは忙しくなって、子供たちはほったらかし。
9歳のアンナは何故、突然暮らしが変わってしまったのか、今まで良しとされてたことがダメになったのか、分からない。宗教の授業、得意だったのに・・・。
長年勤めてきた家政婦の女性は、共産主義者を嫌うゆえに解雇される。彼女は辞める前にアンナに教えるのです。

「全部、フィデルが悪いんだ」



個人的に、すごい良かった。
政治主義や宗教は、本人が納得していないと意味がない。9歳の子供だからといって、何も分からないわけじゃない。
アンナの、子供ゆえの純粋な疑問、真っ直ぐ見極めようとする目がすごく印象的でした。なんで、あれもダメなの?なんで?正しいなんて、どうして分かるの?

アンナを見てて、ちょっと違うけど、母方の祖父が某健康食品にハマってて、その集会のようなものに連れて行かれたことを思い出しました。あの居心地の悪さったら!何故、自分がそこにいるのか分からない。自分が熱を持っていないのに、何かヘンな感じ。
アンナが共産主義者の集まりを“ヘンな人たち”という感情がすごく分かりました。

アンナの小さな弟は、すぐに新しい生活に溶け込んでしまいます。でも、それは彼が幼かったせいではない。彼がその新しい生活を受け入れた理由が、ちゃんとあるからです。

いや、マジ大人たちは子供がちゃんと自分の意思を持っていることを自覚しないといけません。自分の分身のように思いがちですが、ちゃんと理解してもらう努力をしないとダメですよ。

アンナは自分の目で、色んなものを見ます。
この映画は、共産主義だからダメだというものではありません。(反転↓)思想のために時に武力に出てしまう共産主義、でも、思想自体が悪いわけじゃなく、自分達の正しさを守るために盲目になってしまうとこ。
また、共産主義者を敵視するカトリックの世界にも、勿論闇はある。それも、宗教の思想自体が悪いわけではなく、思想を守るために、柔軟さを忘れてしまっているとこ。
両方をしっかりと見定め、アンナの心情は少しずつ変わっていきます。

エピソードとして、“中絶”ということが出てきます。母親が中絶した女性たちの告白をまとめた本を出し、支援していこうとするものですが、中絶というのは、カトリックでは認められていないので、中絶した女性は社会から白い目で見られます。

母親は、アンナに言います。
「中絶っていうのは、産みたくないか、産める環境にないか、そういう理由で自分で決めることなのよ。」

私だって、中絶は悪寒が走るくらい嫌い。
でも、それは世の女性皆そうでしょう。そして、世間からどういう目に遭わされるか知っていて、敢えてそれをやるというのだから、余程の理由があるのです。
自分の意思で決めた中絶という選択。それを尊重したいとは、思います。
辛い選択をした人間を、さらにどん底に落とすことはしたくない。

危険な場所に行くのも、敢えて貧しい生活になるのも、何もかも自分で決めるべきもの。
自分の生き方は、自分で決めるべきなんだ。たとえ小さな子供であっても。

この映画の最も大事な核は、そこだったのだと思います。
何だかすごく・・すごく、人間として、根底の部分で大切なものを思い出したような映画でした。
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「王妃マルゴ」
王妃マルゴ 無修正版 [DVD]

1994/フランス/監督:パトリス・シェロー/原作:アレクサンドル・デュマ/出演:イザベル・アジャーニ、ダニエル・オートゥイユ、ジャン=ユーグ・アングラード、ヴァンサン・ペレーズ、ヴィルナ・リージ

アレクサンドル・デュマは、私が子供の頃から大好きな作家です(言っても、3作品しか読んだことないですけど)。この人が原作っていうだけで飛びついた映画。
この人の作品は、すんごいドラマチック展開で、どきどきする。

それにこれ、大女優のイザベル・アジャーニが主演なんですよね。この人が出てる作品、観たことなくて。録画予約したときには気づいていたのですが、3ヶ月も前に録画したやつなので、観たときにはすっかり忘れてました(笑)。誰、この綺麗なひと!!と、後でキャスト観て、「ああ、そうだった・・!!」と(笑)。

ヴァロア家とブルボン家ってだけで、観ながらわっきわきしてました(ベルばら、ベルばら!!)。
ヴァロア家の王家、シャルル9世の治世。カトリックとプロテスタントの対立が激しかった頃で、カトリックのヴァロア王家のお姫様マルゴは、プロテスタントのアンリ(後のブルボン王家創始者)へと嫁ぐことを母親から命じられる。
マルゴとアンリの結婚式から、映画は始まるのですが・・・
この結婚を祝うために集められたプロテスタントたちは、一夜にして虐殺されてしまう。史実(聖バルテルミーの虐殺)です。もちろん、話全体、陰謀と恋愛に関してはデュマの創作ですけど。なんかあれですよ、特区日本のアレ(反逆のルルーシュ)を思い起こさせる虐殺ですねー。街中の至るところに死体が無残に積み上げられた映像は、相当凄かった。迫力がありすぎて、そのむごさがすごく伝わってきました。
この、虐殺の夜の次の日の朝のシーンと、森での狩りのシーンの映像がすごい迫力でした。映像としても、すごい映画です。
でもごめん、たった一匹のイノシシを追いかけての、あの迫力シーンには、ちょっと笑ってしまいました(笑)。何人で追いかけてんだよ。

とにかく、イザベルのマルゴが魅力的。マルゴって、マルグリットの愛称なのですね。激しい恋と人間愛、母性を持つ、魅力的な女性です。
マルゴの母親の愛は、たった一人にだけ注がれたため、恐ろしい陰謀へとその愛は姿を変えました。
マルゴは、孤独で、女としての情愛の激しい女性でしたが、母親と違って、その母性は周りの人や兄弟や民へと向けられてました。母親の陰謀を知るマルゴの苦しみ、政略結婚の相手であっても、アンリを助けたいと兄弟のような愛を向けるマルゴの悲しみを思うと、胸を突かれる思いでした。
デュマらしい、ドラマチックな展開でしたよー。

それにしても、マルゴの兄?弟?のアンジュー公。この映画では明らかに悪役でしたけども。
後にアンリ3世となったアンジュー公ですが、デュマは彼が王として即位してからの14年間を描いた小説(「アンリ三世とその宮廷」)も書いてるんですね。勿論、アンジュー公とは別人間として描かれてるんでしょうけど、わー、どんな話なんだろう!
「フランスの友だち」

1989年/フランス/監督・脚本:ジャン=ルー・ユベール/出演:リシャール・ボーランジェ、アントワーヌ・ユベール、ジュリアン・ユベール、ジュディット・アンリ

個人的には、物凄いツボな作品でした。
主人公の男の子二人、特に兄の方が物凄い美少年だったのですが、この兄弟は監督の息子さんらしいですね。 兄のアントワーヌは、前作「フランスの思い出」にも出演されているようです。あの子がこんなに大きくなったのかー!
舞台は、第二次大戦末期のフランスの小さな村。
この男の子たちが、うっかりドイツ軍とアメリカ開放軍を見間違えて村の人々に伝えたため、村長が撃たれて亡くなってしまうのです。わざとではないんですが、あまりの重大事に村の大人達が子供たちの処分を話し合い、それを聞いた子供たちは逃亡するのです。
この兄弟がまた悪ガキでですね~(笑)。逞しいったらありゃしない。
逃げるために洗濯物を盗むのですが、うっかり女の子用のワンピース。美少年アントワーヌは、途中からスカートを履いています(笑)。むちゃくちゃ可愛いんだ、これが!!
逃亡中に出会う、一人の負傷したドイツ兵。戦争が2回目だという彼と心を通わせていく、そんな話だと思っていました。

ラストに、あんな衝撃的なシーンが待っているとは。
(ネタバレ反転↓)
彼らが立ち寄った、ゴーストタウンのような町。その不気味さは、私をものすごく不安にさせました。
何かが、変だ。
そういえば、読んだことがあるのです、私は。「朗読者」という小説で、この町の様子によく似た風景を。
ドイツ兵のフランツ(だったかな?)は少年達を寝かせたあと、近所の家を回って、逃亡に必要なものを拝借するのです。このときの音楽の不気味なこと!不安を駆り立てる音楽。
翌朝、彼は犬に導かれて教会の中へ。その中の衝撃的な風景・・・

あまりの衝撃的な映像と、彼の神様に向かって叫ぶ言葉に、胸が苦しくて涙が止まりませんでした。
あまりの突然のことに、言葉もありませんでした。
これが、戦争。これが、リアル。

人の温かさと、戦争がもたらす人の非情さと。
ラストのそのシーンまで、あまりに心温まる物語だったゆえに、その突然さが背中合わせのリアルを思い起こさせ、現実の怖さに震えました。ガツーンと頭を打たれたような気分です。
そうなんだ。今でも、地球上の色んなところで、このような恐ろしい現実が行われているのです。
そのことを、私達は忘れてしまってはいけない。
人間の幸せがどこにあるのか、忘れてはいけないのです。
「クレールの刺繍」
クレールの刺繍 [DVD]
2004/フランス/監督:エレオノール・フォーシェ/出演:ローラ・ネマルク、アリアンヌ・アスカリッド、ジャッキー・ベロワイエ

望まぬ妊娠をしたクレールは、匿名出産という形をとることにした。しかし、体力を使う仕事は辞めなければならず、妊娠の事実を家族にも秘密にしたままなので、クレールの心は大きくなるおなかと比例して、不安でいっぱいになる。

クレールの新しい勤め先である刺繍のアトリエの女主人。息子を事故で亡くしたばかりの彼女だけが、クレールの秘密に気づくのです。

フランス映画らしい、直接的な説明のない、口数の少ない映画でした。そしてとにかく映像美!繊細な刺繍ができていく様が、本当にキレイで感動しましたよー。
映画の雰囲気としても、扱うテーマとしてもとても好きでした。
一針一針、注意深く針を進めていく刺繍と、模様のように繋がっていく生命の連鎖と。

それにしても、クレールの家族が誰一人として妊娠に気づかなかったのが不思議!気づいてて何も言わなかったのかなぁ?
弟くんの「太ったね」っていうのは子供だからしょうがないとしても、母親は気づくでしょー!
そういう家族構成的なものにも、意味があったのかもしれない?
「私のように美しい娘」
私のように美しい娘〔フランソワ・トリュフォー監督傑作選12〕 [DVD]

1972/フランス/監督:フランソワ・トリュフォー/出演:ベルナデット・ラフォン、アンドレ・デュソリエ、シャルル・デネル、クロード・ブラッスール、ギー・マルシャン、フィリップ・レオタール

いやぁ・・ここまでやってくれると、壮観です。
社会学の教授が、女囚をサンプルに犯罪心理学を解明するために、インタビューを行います。
そこで出会ったカミーユという、夫を殺した罪で刑務所に入っている女性の生い立ちと犯罪までの経緯を聞くのですが・・・

彼女の悪女っぷりが本当に徹底してます。
社会学の先生のインタビューで語ってることの背景で、実際に彼女の身に起こったことが映像で流れるのですが、言ってることとやってることの違いに思わず笑いが出ます。
彼女と関わった男たちは、必ず「あの女はそんな良い種類の女じゃない」と言いますが、それでも彼女の魅力にコロッと。
不思議なものです・・・。
さて、その社会学の先生の行く末は・・!?

コメディとして観て良い作品だと思います。面白かった!


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