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映画・舞台・本の感想記録。さて、どの夢を見ようかな。
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「テス」
テス [DVD]

1979/イギリス・フランス合作映画/監督・脚本:ロマン・ポランスキー
/原作:トーマス・ハーディ/出演:ナスターシャ・キンスキー、ピーター・ファース、レイ・ローソン

トマス・ハーディの「ダーバビル家のテス」の映画化。
封建時代のイギリスで生きる女性の、ひたむきであまりに悲しい運命の物語です。

貧しい家に生まれたテスは、類稀なる美貌に恵まれていました。
ある日、牧師より「先祖が名家の家系である」と知らされた両親は、遠縁にあたるダーバビルの姓を持つ金持ちの家にテスを使いにやり、援助を申し込む。
だが、テスの美貌にすっかり魅了されたダーバビル家の息子は、地位を利用してテスを情婦にしてしまう。
そして、そのことがテスのその後の人生にいつまでもいつまでも付きまとう影となる・・・。

あんまり美人だと、かえって大変だなぁ・・・
というのが開始30分までの素朴な感想でした。今の時代だと、こんなことはないのでしょうが、封建時代のイギリスにおいて、女性の生きにくさといったら!
彼女自身はちっとも悪くないのに、世間に振り回されてつらい人生を送った女性の物語でした。あまりの理不尽さに、涙が止まりませんでした。

誰が責められよう。(反転↓)
家族が生きるために、犯されても耐えるしかなかったテスを。
それでもプライドを持って自分を取り戻そうとしたテスを。
生まれてきた罪のない子供を愛したテスを。

やがてテスは暗い人生の中で、牧師の息子と愛し合い、過去を話せぬまま結婚式を迎えてしまう。そして、その夜、彼女は勇気を出して夫に過去を話すのですが・・・
何がエンジェル(テスの夫)だ!
あんなにテスに恋焦がれてたくせに(萌えたんだぞ、あたしは!)、自分が愛したテスじゃない、なんて、それじゃあテスは・・テス自身は何者なの?あれほど苦しんだテスを、君のせいじゃないと言いながら拒否するエンジェルの言葉に、私の胸もひどく傷つきました。
ひどい ひどい ひどい!!

外国に行ってしまった夫をひたすら待ち続けるテス。
重労働を愚痴ひとつ零さず必死に働くテス。
こんなに働き者で一途なテスの、一体何を見て蔑むの?


この作品は、トマス・ハーディの出身地が舞台。男性の手によって、この理不尽な封建体制が描かれたとは、驚きました。
当時、そんな風に考えるなんて決して有り得ないことだったでしょうに。
この物語が男性の手によって描かれたこと、少し嬉しいです。
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「真珠の耳飾りの少女」
真珠の耳飾りの少女 通常版 [DVD]

2003/イギリス/監督:ピーター・ウェーバー/出演:スカーレット・ヨハンソン、コリン・ファース、トム・ウィルキンソン、キリアン・マーフィ

オランダの画家フェルメールの名画「真珠の耳飾りの少女」が描かれた背景を描いた作品。
フェルメールといえば、17世紀というオランダ絵画の最盛期の画家。17世紀オランダ絵画については、特別な光の描き方がなされてると、「オランダの光」というドキュメンタリー映画で観たことがあります。もっとも、そのドキュメンタリーは、その光が本当に存在するのか、という絵画の中だけではなく、自然光としての存在を実証するものでしたが。

この映画の中でも、その光は非常に意識されて作られていたと思います。「真珠の耳飾りの少女」のモデルの少女(映画の中の設定です)、使用人のグリードがアトリエの窓を開けた瞬間に部屋の中に溢れる光。
まさに、オランダ絵画を思い起こさせる画でした。

映像美だけでもおなかいっぱいなほどスバラシイ映画でしたが、フェルメール役の俳優さんがコリン・ファースだなんて もう 贅沢すぎる・・!
あまりのカッコ良さに息が止まりそうでした・・!

フェルメールがグリードを見つめる、じっくり品定めする、絡めつくような強い視線。その視線に恥ずかしそうに耐えるグリード。

し 心臓が壊れそう・・・!

あの人は目で殺しますね、ほんと。
コリン・ファースのあまりの目線の強さに、私の方が正視できませんでしたよ(笑)。

フェルメールは、グリードの感性の鋭さにも感銘を受けるようでしたが、グリードの言葉はほんとうにすごい。

心まで描くの?」

にはフェルメールも驚いたでしょうね。彼女に惹かれるのもしょうがない。つか、画家としてこれ以上の褒め言葉はあるでしょうか。

プラトニックなのに、だからこそ、何とも官能的なラブストーリーでした。つかもう、コリン・ファースの魅力が最大限に引き出された映画でした。久しぶりに映画でむちゃくちゃトキメキましたよ。
「ぜんぶ、フィデルのせい」

ぜんぶ、フィデルのせい [DVD]

2006/フランス/監督・脚本:ジュリー・ガブラス/原作:ドミティッラ・カラマイ/出演:ニナ・ケルベル、ジュリー・ドパルデュー、ステファノ・アコルシ、バンジャマン・フイエ

父親の姉の夫が死んだことがきっかけで、共産主義者になってしまった家族。
突然貧しくなって家を引っ越して、大勢の人が出入りするようになり、カトリック学校で宗教の授業を受けることを禁止され、パパとママは忙しくなって、子供たちはほったらかし。
9歳のアンナは何故、突然暮らしが変わってしまったのか、今まで良しとされてたことがダメになったのか、分からない。宗教の授業、得意だったのに・・・。
長年勤めてきた家政婦の女性は、共産主義者を嫌うゆえに解雇される。彼女は辞める前にアンナに教えるのです。

「全部、フィデルが悪いんだ」



個人的に、すごい良かった。
政治主義や宗教は、本人が納得していないと意味がない。9歳の子供だからといって、何も分からないわけじゃない。
アンナの、子供ゆえの純粋な疑問、真っ直ぐ見極めようとする目がすごく印象的でした。なんで、あれもダメなの?なんで?正しいなんて、どうして分かるの?

アンナを見てて、ちょっと違うけど、母方の祖父が某健康食品にハマってて、その集会のようなものに連れて行かれたことを思い出しました。あの居心地の悪さったら!何故、自分がそこにいるのか分からない。自分が熱を持っていないのに、何かヘンな感じ。
アンナが共産主義者の集まりを“ヘンな人たち”という感情がすごく分かりました。

アンナの小さな弟は、すぐに新しい生活に溶け込んでしまいます。でも、それは彼が幼かったせいではない。彼がその新しい生活を受け入れた理由が、ちゃんとあるからです。

いや、マジ大人たちは子供がちゃんと自分の意思を持っていることを自覚しないといけません。自分の分身のように思いがちですが、ちゃんと理解してもらう努力をしないとダメですよ。

アンナは自分の目で、色んなものを見ます。
この映画は、共産主義だからダメだというものではありません。(反転↓)思想のために時に武力に出てしまう共産主義、でも、思想自体が悪いわけじゃなく、自分達の正しさを守るために盲目になってしまうとこ。
また、共産主義者を敵視するカトリックの世界にも、勿論闇はある。それも、宗教の思想自体が悪いわけではなく、思想を守るために、柔軟さを忘れてしまっているとこ。
両方をしっかりと見定め、アンナの心情は少しずつ変わっていきます。

エピソードとして、“中絶”ということが出てきます。母親が中絶した女性たちの告白をまとめた本を出し、支援していこうとするものですが、中絶というのは、カトリックでは認められていないので、中絶した女性は社会から白い目で見られます。

母親は、アンナに言います。
「中絶っていうのは、産みたくないか、産める環境にないか、そういう理由で自分で決めることなのよ。」

私だって、中絶は悪寒が走るくらい嫌い。
でも、それは世の女性皆そうでしょう。そして、世間からどういう目に遭わされるか知っていて、敢えてそれをやるというのだから、余程の理由があるのです。
自分の意思で決めた中絶という選択。それを尊重したいとは、思います。
辛い選択をした人間を、さらにどん底に落とすことはしたくない。

危険な場所に行くのも、敢えて貧しい生活になるのも、何もかも自分で決めるべきもの。
自分の生き方は、自分で決めるべきなんだ。たとえ小さな子供であっても。

この映画の最も大事な核は、そこだったのだと思います。
何だかすごく・・すごく、人間として、根底の部分で大切なものを思い出したような映画でした。
「SPOOKY HOUSE」

SPOOKY HOUSE [DVD]

2004年/piper/作・演出:後藤ひろひと/振付:竹下宏太郎/出演:山内圭哉、楠見薫、平田敦子、川下大洋、篠原ともえ、廣川三憲、石丸謙二郎、竹下宏太郎、後藤ひろひと

「ひ~は~」、「ベントラー、ベントラー・・・」へ継承していくシリーズ(?)第一弾の舞台です。
私は、真逆の順番で見ましたねぇ~(笑)。

怖い噂のある古い洋館、スプーキーハウス。
噂を利用してこの家に勝手に住んでいる三人家族と、噂を聞きつけて映画の舞台にしたいとやってきた撮影スタッフ(と言っているが、本当はカラオケ映像)と彼らにこの家のカギを渡す近所の人、そしてこの家に隠された金を探しに来た泥棒と国際的詐欺師のコンビ。
この3組が後藤大王のイタズラによって、この家でバッタリ出くわしたりニアミスしたり、誤解が誤解を生む、まぁ、ベタといえばベタなエンターテイメント。舞台だからこその、エンターテイメントです。
腹筋がよじれるかと思うくらい笑った!

後藤大王の遊び心とアイデアの詰まった作品。
私は、ベントラー・・から観たので、何となく次の展開が読めて(笑)、お約束の楽しさで喜んで見てましたが、これを第1作品として観た方にとっては本当、面白いやらアイデアに感動するやらで、大変だったのではないでしょうか。

2010年公演予定のpiper作品は観客参加型らしいですけども、この舞台もある意味観客参加型・・・しかも、気がついたら参加させられてる(笑)という、何とも驚かされる大王の遊び心。

気持ちよく笑える舞台です。こういう舞台は大好きだ!
「ぼくのバラ色の人生」

ぼくのバラ色の人生 [DVD]

1997年/ベルギー・フランス・イギリス合作映画/監督・脚本:アラン・ベルリネール/出演:ジョルジュ・デュ・フレネ、ジャン=フィリップ・エコフェ、ミシェール・ラロック、エレーヌ・バンサン、ダニエル・ハンセン、ジュリアン・リビエール

7歳の少年、リュドヴィックの夢は女の子になること。綺麗な女の子のお洋服や人形が大好き。
でも、少年のささやかな夢は、家庭を壊し、家族を不幸にしていく。

長髪の似合う、可愛い男の子。7歳というと、ちょうど境目くらいなんですよね。女の子と一緒に遊ばなくなって、性別がはっきりしてくる頃。
小さなリュドヴィックには、分からない。
自分が女の子になりたいと願うのが、どうしていけないことなのか。

リュドヴィックはとても可愛かったけど、物語はとても切なかったです。
リュドヴィックの家族の心も、とてもよく分かる。リュドヴィックは可愛い息子で弟だけど、例えちょっと変わった子であっても大好きだけど、それでもやはり、生き難い。家族全体が社会から孤立してしまう。
可愛いからこそ、社会から孤立させたくない。でも、可愛いから、リュドヴィックの個性を認めてあげたい。

周りの人間がモヤモヤする中、リュドヴィックの望みはとても純粋なものなんです。
殻に閉じこもり始めたリュドヴィックが夢の中で観た世界は、とても綺麗で、それこそ、何故望むことがいけないのか、分からないほど純粋で・・・。
その夢が綺麗であればあるほどに、切なくなる物語でした。

それでも、何だか不思議だ・・・切ないのに、あの夢の美しさに、何だか救われた気がするのです。


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新潮文庫の100冊 2010
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