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映画・舞台・本の感想記録。さて、どの夢を見ようかな。
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「戦場のピアニスト」
戦場のピアニスト [DVD]

2002年/フランス・ドイツ・ポーランド・イギリス/監督:ロマン・ポランスキー/原作:ウワディスワフ・シュピルマン/出演:エイドリアン・ブロディ 、トーマス・クレッチマン 、エミリア・フォックス 、ミハウ・ジェブロフスキー 、エド・ストッパード

地獄のような戦場の中、ただ一人生き延びたピアニスト。
私は、彼が健気にピアノへの想いを馳せながら生き延びていく話だと思ってたんです。
でも、この手記は、そんなものではなかった。
もっと、リアルで、もっと、もっと・・・(言葉がみつからない)。
ドイツ兵の冷情さ、一体どう生きたらこんなにも人を殺すのに無感情になれるのかというほどに。
私も、あの中で生きたら、あのようになるのだろうか?人間の心とは、何と脆く恐ろしいものなのだろう。
でも、これが“リアル”なのだと感じられるのは、シュピルマンが、ヒーローではないという点でしょう。
(ネタバレなので以下反転します)↓
彼は、天才ピアニストであるゆえに、その才能を惜しまれてたくさんの人に助けてもらいます。
逃げて、逃げて、やがて食べ物のことしか考えられなくなり、見るに耐えられないほどに醜くなっていく。
一緒に観てた会社の先輩は、「自分だけが助かればいいの?って感じだったよね。何か途中から腹たってきたもん。」って言ってました。
でも・・・
シュピルマンが逃げたいのだと友人に相談したとき、友人が言った言葉、「生き延びていく方が、死ぬより苦しいぞ。」。
そのとおりだと思います。私だったら、正直早く殺して欲しいと思います。
あんなものを見るくらいなら。あんな思いをするくらいなら。
早く死んで、楽になりたいと願うことでしょう。
彼は、生き延びる道を選んだために、地獄を見るのです。誰もいない廃墟が続く町、たった一人で、取り残されて。
彼が、たった一人で生き延びたことを、どうして責められるでしょう。自分だけが助かったことを、どうして責められるでしょう。
あの状態に置かれて、どうして目の前で殺されていく人に無頓着になることが、自分勝手なことだと言えましょうか。
命乞いをするシュピルマンの姿は、本当に醜い。
哀れで、みっともない。
戦争の中、生き延びるということが、どういうことなのか思い知らされました。
ラストで、自分を助けてくれたあの人を、シュピルマンは助けられなかったのか、それとも助けなかったのか・・・
シュピルマンの表情からはうかがい知れませんでしたが、例え後者だったとしても・・・私は彼を責めることができません。

これは、フィクションではありません。
本当にあったことで、人間は、実際に“ああなる”んです。そのことに、深い絶望を抱くとともに、願ってやみません。
人間をあそこまで追い詰める戦争というものが、地球上から、なくなることを。
痛みを感じすぎて、何も感じなくなってしまわないように。
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新潮文庫の100冊 2010
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